世界はそれを逃避と呼ぶんだぜ
若者の課金離れ
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陽一

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一枚絵で書いてみm@ster
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百合ですん。
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「とらわれたらくえん」


伊織/


 とらわれている。
 それは物理的にも、精神的にも。

 春香のしなやかな指が、私の下腹部をなぞる。
 そのたび、私は何もできずに小さく声を漏らす。
 私の両手は、春香に押さえつけられている。身動きがうまくとれず、あっという間に一糸まとわぬ姿にされた。
 抵抗が、できない。
 どころか、それを望み始めている自分に気づいていた。
 体中が熱くなる。ぴりぴりと電流が脳を貫く。
 春香が唇を重ねる。舌を伸ばし、私のそれと絡ませ合う。甘く、刺激的な味の何かをそそぎ込まれ、私は喉をならして飲み込んでゆく。
 春香の指が、私の秘部に触れた。
 ――伊織。
 春香が私に微笑みかける。妖しく、どこか私をからかうように。
 ――びしょびしょだよ?
 羞恥で顔が熱くなる。けれど、同時にそう言われることに快感を覚えている自分がいた。
 ――どうして欲しい?
 春香が私の耳に囁く。そのまま耳朶を優しく噛まれる。
 甘い声でありながら、彼女の言葉には強制力があった。それ以外の答えを一切許さない口調。
 そして、私の口もその通りに動いていた。
 ――して。お願い、だから。
 ――うん、分かった。
 そうして春香の指が、私の深奥を――。

       /

 ――おめでとう。
 翌朝。目をこすりながらリビングへと出ると、千早にそう言われた。
 ――おめでとっ。
 金髪の癖毛と格闘しながら、美希もそう笑いかけた。
 ――ありがとう。
 そんな当たり前の笑顔が、とてもまぶしくて。
 私は思わず、千早の胸の中に飛び込んだ。
 ――ふふ、朝から甘えんぼね?
 美希も近づいてきて、私を後ろから抱きしめてくれた。
 ――伊織、おめでとっ。
 寝起きでぼさぼさの頭の春香も、横から抱擁に加わる。
 ――とても、あったかいわ。
 ここは“楽園”だ。
 もう何も悩まなくて済む。
“水瀬”の家に取り入ろうとする、面倒な人たちのことも。
 孤独を抱えて、素直になれなかった自分のことも。
 何も、考えなくて済む。
 好きなだけ――この人たちに、甘えられる。
 ――ね、水瀬さん?
 と、千早が私の頬に手をあてながら、目を覗き込んでくる。
 ――こんな幸せ、私たちで独占しちゃうのはもったいないと思わない?
 ――どういう、こと?
 つまりね、と千早は微笑んで。
 ――もっと、広げましょう。私たちの“楽園”を。人を増やして、みんなのものにしましょう。
 それは――
 とても、素晴らしいことだと思えた。
 優しい人たちが、ほんとうの私を受け入れてくれる人たちが、もっともっと増える。もっと、私を認めてもらえる。
 ああ、楽園じゃ、ないか。
 ――誰か、心当たりはある?
 私は、少しだけ躊躇った。
 その名前を口にするのは照れくさかった。
 だけど、ずっと想っていた人の名前だ。
 私が急に事務所からいなくなって心配しているだろうから、早く元気な姿を見せてあげたい。
 そして、あわよくば――彼女の肉体を、隅々まで味わいたい。
 私はそんな欲望を胸に秘めて、口を開いた。

「やよいが、いいわ」


春香/


 とらわれている。
 それは、物理的にも、精神的にも。

 始まりは突然のことだった。
 千早ちゃんが、貯金でぽんとマンションを買ったのは聞いていた。
 ……彼女の周りで、色々と辛いことがあったのは噂話で知っていた。それの逃避だろうとは予想していた。
 だけど、一人の友達として、力になってあげたかった。
 だから、千早ちゃんに部屋に来ないかと誘われたときは嬉しかった。

 ――いらっしゃい、春香。
 千早ちゃんは、私を笑顔で迎え入れてくれた。
 おじゃまします、と言って入る。
 部屋の中は何故か暗かった。電気を消しているらしい。
 千早ちゃんは私が部屋に入るのを確認すると、ドアの鍵を閉め、チェーンをかけた。
 チェーンまで……?
 私が不思議に思って千早ちゃんに理由を聞こうとすると、
 突然バチンと視界がはじけて、
 体中がしびれて、
 意識が、トんだ。

       /

 次に目を覚ましたとき。
 私は両手を縛られていた。
 ベッドの上部に縄でくくりつけられていて、身動きがとれなかった。
 部屋の照明は薄ぼんやりとしていて、周囲の状況がよく分からない。千早ちゃんのマンションのままだろうか?
 そして――どういうわけか、私は服を何もつけていなかった。
 混乱して、叫び出し――それができないことに気づいた。口元には猿ぐつわを噛まされており、動物のようなうめき声しか出せなかった。
 ――目を、覚ましたのね?
 千早ちゃんの声がした。
 どうしてこんなことをしたのか。非難ではなく、単純に疑問を視線に混ぜて問う。
 ――それはね、“楽園”が作りたかったのと、
“楽園”? そう聞き返す(どのみち話せなかったが)暇もなく、千早ちゃんが私のいるベッドに乗ってきた。
 近くに来られて、初めて分かった。
 彼女もまた――服を何も身につけていなかった。
 ――私は、春香が好きだからよ。
 千早ちゃんが、私の猿ぐつわをゆっくりと解く。
 涎でだらだらになった私の口の周りを、丁寧に舌で舐めてゆくと――
 そのまま、唇を重ねてきた。
 ――!
 身をよじろうとしても、逃げようがない。
 千早ちゃんの舌が、閉じた歯をこじ開けて、私の口腔に侵入する。
 舌を吸って、歯茎をなぞって、私の体内の酸素を奪う。
 彼女の口から唾液と、何かの液体が注ぎ込まれる。甘く、脳内がとろけるような味だった。
 キスは、初めてだった。
 無理矢理で、最初は少し気持ち悪かった。
 千早ちゃんは、抵抗しようとする私に構うことなく、がむしゃらに唇を求めてゆく。
 続けているうち、だんだんと体が熱くなってきた。
 舌を絡ませ合うことがこんなに気持ちいいとは知らなかった。
 徐々に、私の体から力が抜けていって――
 しばらく、千早ちゃんがキスをやめて、口を離したことに気づかなかった。
 彼女と私の口に、糸の橋が伝うのが見えた。
 ――春香。好きよ?
 そうして、千早ちゃんは私の体に覆い被さり――

       /

“楽園”を作りたいのだと、千早ちゃんは言った。
 拘束は解いてくれなかった。
 食事は全部千早ちゃんが食べさせてくれた。
 ……トイレも、千早ちゃんに世話をしてもらった。
 服を身につけることも、許されなかった。

 彼女はたびたび、私にキスをした。
 そのたびに、唾液とともに“何か”――甘い液体を流し込まれた。舌で口をこじ開けられているため、拒むことはできなかった。
 おそらくは、何かの薬だったのだろう。そう気づいたときには、総てが手遅れとなっていた。
 いつしか私の頭はぼーっとして、
 何も考えられなくなって、
 千早ちゃんのことしか見えなくなって、
 彼女の指でなぞられるのがうれしくて、
 きもちよくて、
 なんどもなんどもたっして、

 そうして、ちはやちゃんのことを、だいすきになりました。

       /

 一週間経ったのか、一ヶ月か。はたまた一年か――
 私の拘束が解かれた。
 ――おめでとう。
 千早ちゃんは言った。
 ――おめでとっ。
 寝室に、美希が入ってきた。どうやら彼女もこの家にいたらしい。
 拘束された日、スタンガンで私を眠らせたのは、彼女だったようだ。
 でも、そんなことはどうでもよくなって。
 ――“楽園”へ、ようこそ。
 彼女たちの仲間になれたのが、とても嬉しかった。
 千早ちゃんとキスを交わす。
 熱々だね、と美希も横から割り込んできて、そのまま三人で唇をついばみ合った。美希とキスするのは初めてだったけど、まったく嫌ではなかった。
 ――ねえ、春香。
 キスが終わると、唾液でべちゃべちゃになった口元を拭いつつ、千早ちゃんが言った。
 ――こんな幸せ、私たちが独占するのはもったいないと思わない?
 そのとおりだ、と思った。疑問は特に抱かなかった。
 ――誰か、誘いたい人はいる?
 私は少し考えて、言った。
 ――前から、一度泣かせてみたいなぁって思ってたんだ。すごく、可愛いだろうなって――

「伊織が、いいな」

       /

 電話で伊織を呼び出した。
 何ヶ月も姿を消していた私を、彼女も心配していたんだろう。すぐに、千早ちゃんのマンションに来てくれた。
 私は、彼女を出迎えて。
 暗い部屋を不思議そうにみている伊織を、後ろから――

 千早ちゃんが、

 スタンガンで、


千早と、美希/


 とらわれている。
 それは、物理的にも、精神的にも。

 自殺しようと思っていた。
 フィクションの中に出てくる名探偵。彼の周りでは、常に事件が起こっている。行く先々で人が死に、そのたびに探偵は推理をし、犯人を捕まえてゆく。
 けれど。こう考えると、どうだろうか。
 名探偵の行く先で事件が起こるのではなく、
 名探偵が、事件を引き寄せているのだと。

 私もそういう“モノ”なのではないだろうか。
 両親が離婚したのは、まぁよかった。それは別によかった。
 けれど。デビューからついてもらって、私の気むずかしい性格を理解し、……私を愛してもくれたプロデューサーが、
 私の目の前で死んでしまうなんて。

 ……実は。プロデューサーが三股をかけていて、別の女性がそれを知り――その恨みで彼をナイフで刺し殺した、という事実があったのだが。
 そんなことはどうでもよかった。
 彼は私の心も体も愛してくれた。
 私もそれに応えようと思った。彼のために総てを捧げていた。

 だから、彼が死んで、私も死のうと思った。
 生きていく理由なんて、もうどこにもなかったから。
 身辺整理をして、誰にも迷惑をかけずに死のうと思った。
 幸いにして、前から医者にはかかっていたから、強力な睡眠薬はたくさんある。
 うまく使えば、痛みを感じずに死ねるだろう。

 私は765プロへとやって来た。
 社長室に向かって、辞表を提出しよう、と考えていた。
 と、途中の廊下で、美希と出会った。
 ――千早さん?
 窓から差し込む朝の太陽と、それを反射する彼女の長い金髪。反比例するように、暗く憂う瞳を携えて。
 ――どうか、したの?
 彼女の目には、今の私はどんな風に見えているんだろう。
 別に、と私は首を振った。余計な遺恨を残したくはない。
 ――辞めちゃうの?
 私は口を閉ざした。それが何よりも肯定に繋がると理解していても、遅かった。
 そして。私がこの時期に事務所を辞めること。その行動が、はたしてどんな連鎖反応を引き起こすか――それも、伝わっているはずだった。
 ――千早さん。
 私は歩みを再開して、美希とすれ違おうとして、
 手を、捕まれた。
 ――話があるの。いい?
 ……余計な遺恨を残したくはない。
 けれど、どこか思い詰めたようにも見える彼女を、見捨てるわけにもいかなかった。

 近くにホテルをとってるの、と彼女は言った。
 おそらく彼女の雰囲気を見る限り、軽く終わる話ではないことが分かった。
 結局辞表は出し損ねてしまったが、それは後日でいいだろう。
 ……美希のことは、よく世話をしていた。彼女が行き詰まったとき、色んなアドバイスをしてあげた。
 だからだろうか。私のせいで、美希が思い詰めた真似をしてしまうのは嫌だった。

 部屋はスイートだった。
 豪華絢爛、といった感じの内装が私を出迎える。
 こんなところには来たことがない。
 すごいわね、と感想を言おうとして、
 言えなくなった。
 首筋に、焼けるような痛みが走って、
 私は床に倒れた。

 白いもやがかかった視界の中、
 嬉しそうに笑う美希の顔が見えた。
 ……ふと、私は思い出した。
 そういえば。風の噂で聞いたことがある。
 プロデューサーが三股をかけていた相手の中に、

 星井美希という名前も、あった。


美希と、千早/


 とらわれている。
 それは、物理的にも、精神的にも。

 ミキは千早さんのことが好きだった。
 まだデビューしたてでよく分からなくて、思ったよりもアイドルは大変で、どうしようもなくなって、もう全部投げ出しちゃおうかなんて思っていたときに。
 千早さんが、優しくアドバイスをしてくれた。
 それだけだった。
 あとは、たまに浮かべる、端正で美しい笑顔。
 それだけで、たぶん、十分だった。

 プロデューサーと付き合おうと思ったのは、千早さんが彼のことを好きだったから。
 正直、それ以外に何の意味もない。
 彼は頭が悪かったから、簡単に騙されてくれた。

 三股をかけていたことを、付き合っていたもう一人の女性に伝えたのは、ミキだ。
 煽るだけ煽ったらその通りに動いてくれて、簡単に――殺してくれた。
 簡単に――殺されてくれた。

 千早さんは目に見えて落ち込んでいた。
 いや、落ち込んでいるなんてものではない。
 感情が、抜け落ちていた。
 何もない。がらんどうの人形のよう。
 目を離したら消えてしまいそうな、儚さ。
 ……いや、真実消えようとしているのだ。どこか人気のない場所で、誰にも知られず死のうとしている。
 そう、感じ取った。
 哀しいことがあったあとの女性は落としやすいという。それを狙って、プロデューサーに死んでもらったわけだけど――
 やっぱり少し、やりすぎた。
 人形みたいな千早さんも可愛らしいけど。
 このままじゃまずい。引き留めなくちゃ。
 だけどどうやって?
 考えているうちに、体は行動を開始していた。

 ホテルを予約して、そこに千早さんを連れて行った。
 彼女が部屋の内装に気をとられている隙に、
 そっと背後から忍び寄って、
 スタンガンを、首筋に押し当てた。
 ばちんと彼女の体が弓なりに反れて、床に倒れ込んだ。
 ――ずっと好きだったの、千早さん。
 ミキは卑怯だ。
 こんな形でしか告白できないなんて。
 でも。こうでもしなければ、
 ――千早さんが振り向いてくれないから。
 だから。
 ――振り向いてくれないなら、振り向いてくれるきっかけを、作ればいいの。
 千早さんの体を抱え上げる。彼女は羽みたいに軽くて、ミキでも簡単に持ち上げられた。
 彼女はびくびくと時折体を震わせるだけで、満足に身動きもとれていない。意識はあるようだが、虚ろな目をしている。
 そのまま部屋の奥にあるベッドへ向かい、彼女の体をそこに横たえる。
 髪が生き物のように、シーツの上に広がる。
 脂汗の浮いた彼女の頬を、撫でる。
 とても――美しい。
 少し苦しそうな顔も、愛らしい。
 これが、今から、ミキだけのものになるのだ。
 なんと喜ばしいことなのだろう。
 さて、もう一段階“こと”を進めなければ。

 ベッドに千早さんを横たえたまま、机まで歩いて、上に乗せたバッグの中を探る。
 そこに入った小瓶を取り出す。
 つい先日、ネットの通販で購入した、ピンク色のそれ。
 気持ちよくなる、魔法の薬だ。
 ――千早さん、待っててね?
 鼻歌を口ずさみながら、ベッドに戻る。
 心臓が高鳴る。これから起こる出来事を、体が期待している。
 ミキはゆっくりと千早さんに覆い被さって、
 そっと――
 唇を、
 重ねた。
 ――ん、
 最初はついばむように。
 徐々に、激しく。むさぼるように。
 千早さんは抵抗一つしない。
 舌で、閉じられた唇をこじ開ける。
 そうして、彼女の口腔に侵入した。
 そのまま、彼女のじっとりと濡れた口内を、蹂躙していって――
 ――!?
 彼女の舌が突如蠢き、
 何かを、ミキの口へと逆に流し込んできた。
 慌てて口を離したが、
 大量の唾液と共に送られてきたので、堪えきれずに嚥下してしまう。
 錠剤のようだったが――
 ――何を、したの!?
 千早さんは小さく笑みを浮かべただけで、答えようとしない。
 一体何を飲まされたのだろう。
 そう思考した瞬間、
 猛烈な眠気が襲ってきた。
 思い出した。確か、千早さんは前から医者にかかっていたはずだ。
 睡眠薬を処方されていても不思議ではない。
 それを、ミキが目を離している間に口に含み、逆に流し込んできた――
 抵抗しようとする。だが、睡魔はあっという間に体を包み込んで――
 ベッドに、倒れ込んだ。

       /

 目を覚ましたとき。
 ミキは手足を縛られていた。
 どれほど長い時間眠っていたんだろう。
 意識がだんだんとはっきりしてくる。
 視線を巡らすと、場所はどうやら、ミキがとったスイートのままのようだ。
 首を動かしてベッドサイドを見ると、そこに千早さんが腰掛けているのが見えた。
 ――起きた?
 千早さんは、掌で、小瓶を弄んでいた。
 ――よく寝てたわね。二十時間くらいかしら。ようやく私も、手の痺れがとれてきたわ。
 千早さんは――昨日とはまったく雰囲気が違っていた。
 鬱屈とした感じはどこにもない。どころか、晴れやかな笑顔をしていた。
 ――ありがとう、美希。
 千早さんはミキの側へと近づいてきた。
 つう、と指を肌に這わせてくる。
 ――あなたのおかげで、気づけたわ。
 ――なにを?
 震える唇で問い返すと、千早さんは笑った。

 ――なければ、作ればいいのよ。名探偵でも、失わないものがあるはずだから。

 ――なに、を?
 千早さんは笑って、
 ――“楽園”。
 ――らく、えん?
 ――そう、楽園。誰も哀しまなくて、みんな笑顔で、幸せで、お互いに愛し合って、失うものは何もない――そんな、楽園。
 千早さんは、私の目を覗き込む。
 唇と唇が触れあう位置にまで近づいてきて。
 ――美希。手伝って、くれる?
 嫌だ、と言おうとした。
 だけど、言う前に、千早さんがミキの唇を塞いだ。
 そして、あらかじめ口に含んでいたのだろう、
 甘い液体を、
 流し込んでくる。
 ――っ。
 千早さんがゆっくりと唇を離す。
 ――私、あなたのこと、嫌いじゃなかったわ。
 体が、火照る。
 汗が止まらない。
 酸素を求めて息が荒くなる。
 強い刺激が――欲しくなる。

 総てが、分からなくなる――。

 ――ちはやさん。
 ――なぁに? 美希。
 ――すき。
 ――うん。

       /

 ――“楽園”を、独り占めするのはいけないことだと思うわ、美希。
 ――うん、ミキもそう思う。
 ――でしょう? だから、もっともっと、色んな人を私たちの“楽園”につれてきましょう。そうしたら、いつかきっと、たくさんの愛しい人で溢れるわ。それって、素敵なことじゃない?
 ――うん、ミキも、そう思うの。
 ――ありがとう。それで私、次は春香をつれてきてみたいんだけど――


       /


 ああ。
 とらわれている。

 捕らわれている。
 それは、物理的にも。
 囚われている。
 それは、精神的にも。

 だけど、
 誰に、だろう?

 何に、だろう?
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この記事に対するコメント
拝読しました!
陽一Pさん節、炸裂ですね。排他的で、静かに狂気の綱渡りをするエロティシズム――まさにリビドーの美的次元に焦点を当てた感じで、読み応えがありました。
十さんが描かれるキャラの瞳の奥に、ちょっと近寄りがたい耽美な輝きを覚えることがあるのですけど、そこをうまく抽出して、豊潤に培養したような作品だと感じました。
純粋なパラフィリア文学、堪能させていただきました!
【2010/05/21 09:33】 URL | 月の輪P #VFkxEMUo [ 編集]

読ませていただきました
嫉妬、憧憬、愛情、それらを含めた人のナマの感情で構成されている部分が加速度的に壊れていく様は本当に怖くて、良い意味で心臓に悪かったです。そして卑猥な単語ばかりを並べた愚にもつかない作品が多く見受けられるなか、個々人の感覚を切り取って淡々と語りながらそれを淫靡なものに昇華させているあたり、陽一Pさまの技量の高さに驚かされました。良い作品をありがとうございました。

そして自分の脳内を文章に纏められないという物書きとして致命的に最悪な頭なので、感想を書くのは苦手です・・・・意味不な米失礼しました><;
【2010/05/21 23:07】 URL | かるーあ #- [ 編集]


>月の輪P
お読みいただきありがとうございました。
今回も色々アレ気な感じをねらった作品となりました。
十さんの絵にはどこか妖しさが感じられたので、色々倒錯した作品に。
お楽しみいただけたのなら幸いです!

>かるーあP
ぼくは基本的に人の生々しい感情を書くのが好きでして、それらが上手く繋がって見えていただけたのなら嬉しいです。
えろい文章を書くのは好きですけど、えろいだけじゃない文章になっていたらいいなぁ。

お読みいただきありがとうございました!
【2010/05/23 02:24】 URL | 陽一 #- [ 編集]

ズシーンと。
重いですなぁ。刹那的で背徳的で。
また、中心が千早さんなのが、もう、ね。ええ。
「居場所がなければ、作ればいい」
――とか、Pに言われちゃったんでしょうか。
彼女の聖域は、いつ崩壊するのでしょうね。
それが悲劇なのか、救いなのかが分かりませんが。

ストーリーが遡行していく感じは、とても面白いですね。
文体と合わせて、とても印象的でした。
【2010/05/25 13:59】 URL | ガルシアP #MhlNZB0o [ 編集]


多分どうあっても待っているのは崩壊なんじゃないかなーと思ったり。
ああなった千早さんは色々取り返しがつかない気がします!

遡行していくのは映画のメメント的な感じで。
こういうギミックすごく好きです。お楽しみいただけたのなら幸いです。
【2010/05/27 00:12】 URL | 陽一 #- [ 編集]


この楽園は素晴らしい 誰もがこの楽園に入れば心も体も囚われの身になる
だけど それに疑問を誰か抱いて 裏切りを起こした時楽園がどう変質するのでしょう
人の心の弱さからこういう楽園を作り出すなら 楽園を崩壊させるのも人の弱さ
きっとみんなその崩壊から目を背けてるんでしょうね あるはずのない
永遠に囚われて
【2010/05/31 21:19】 URL | トリスケリオン #UzUN//t6 [ 編集]


ひたすら退廃的な、先行きくらーい感じで構成してみました。
本来なら成立しえないユートピアを語るむなしさを感じ取っていただければ幸いです。
【2010/06/01 03:08】 URL | 陽一 #- [ 編集]


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