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若者の課金離れ
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一枚絵で書いてみm@ster
大遅刻。
申し訳ありませんでした!

色々と練習。


「いぬ」



 私は犬だ。
 毎日765プロという芸能事務所に遊びにきている。
 建物の中にいるお姉さんたちはみんな優しくて好きだ。
 今日もいっぱい遊ぼうっと。

* * *

 あずさ、という女の人は、“大人”という感じがして、とても綺麗だ。
 私の姿を見ると、いつも優しく微笑みかけてくれる。
「元気だった?」
 わん、と元気に返事をする。すると彼女は目を細めて、それからゆっくり抱きしめてくれた。
「そう……今日はおいしいおにぎりがあるのよ。いっしょに食べましょっか?」
 おにぎり? なんて素敵なものなんだろう。私は、もう一度“わん”と返事を返した。
 彼女は微笑んだまま、私の頭を、ずっと撫で続けてくれていた。

* * *

 雪歩、という女の子は、私が嫌いらしい。
 私を見るといつも怖がって、逃げ出してしまう。今日も、事務所に来た私を見つけると、一目散に逃げていった。
 嫌われるのは、かなしい。
 もっと、ふれあってほしい。
 私を好きになって、離れないでほしい。
 今日こそ捕まえよう。いつもなら諦めて引き返すところを、今回は走って雪歩を追いかけた。
「ひゃうっ!?」
 足を掴むと、彼女は驚いて床に倒れた。
 その隙を逃さない。私は彼女にのしかかって、そのままぺろぺろと頬をなめる。
「……あ、」
 雪歩は私の目をのぞき込んだ。
 そして、少し申し訳なさそうな目をして――
「ごめんなさい……」
 そう言った。
 何で謝られるのか分からなかった。少し強引な私のほうが責められるべきなのに。
 泣きそうな顔になった雪歩を慰めたくて、私は彼女の頬をなめ続けた。

* * *

 亜美と真美という子は、よく分からない。
 私が765プロに初めて遊びにきたときは、一緒になって遊んでくれたのに。
 今は――
 亜美と真美の後ろ姿に、わん、と吠えてみる。
「うわああっ!?」
 大げさに驚いて、二人とも後ろに倒れてしまった。
「あ、えっと、その……」
 亜美と真美は困惑した表情で、お互いの顔を見つめた。
「あ、あはは、げ、元気してる?」
 真美がぎこちなく笑いかけてきた。
 わん、と肯定の返事をする。
「よ、よかった。じゃ、じゃあ、真美はこれで」
「うん、げ、元気なのはいいことだよ、じゃあね」
 二人して転がるように立ち上がって、一目散に私から逃げていった。
 ……最近、双子はいつもこんな感じだ。私が話しかけると、とてもよそよそしくなった。
 気づかないうちに嫌われるようなことをしてしまったのだろうか。
 それとも、私はそんなに見た目が可愛くないから、見るのが嫌なのだろうか?
 私は窓に映った自分を見る。
 首の赤い首輪と、
 胸元まである髪と、
 白い服。
 ……変に、見えるのだろうか?

* * *

 765プロにいる男の人は嫌いだ。
 プロデューサー、という名前らしい。なんだか厳めしい名前なのもそうだし――
「千早」
 彼が私の名前を呼んだ。ぷい、と首を背けて無視する。
「逃げるな。お願いだから、戻ってきてくれ」
 怒ったような声だった。そしてそれ以上に、哀しそうな声だった。
「哀しいのは分かる。お前にあったことを考えれば、俺が勝手なことを言ってるのも分かる。けどな、お願いだから、帰ってきてくれ。ちゃんと、人の言葉を喋ってくれ。お前の気持ちを聞かせてくれ。
 だって、そんなの、つらすぎるだろ……」
 うるさい。私に構わないで。
 私を捕まえようとしたプロデューサーの腕を、思い切り噛んで逃げ出した。
「千早!」
 逃げる。逃げる。

* * *

 私はぼんやりと765プロを見上げた。ここまでくれば、あの男の人は諦めて追いかけてこない。
 今日はもうだめだ。また今度遊びに来よう。
 今度は彼がいないときに来よう。そして、あずさに思い切り甘えよう。
 雪歩とは、もっと仲良くなれたらいいな。
 亜美と真美とは、早く仲直りしたい。

 私は想像した。
 あずさに抱きしめられて。亜美と真美が横にいて、私を見て。雪歩が少し恐がりながらも、頑張って私に触れようとしている――
 そんな、幸せな光景を。

 私は、“わん”と大きく吠えて。
 アスファルトを、歩き出した。
 決して、後ろを振り向かないように。
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